たったひとりの卒業式 ( 110304)

みなさん、おはようございます。今日もツイてます。

本日紹介する「たったひとりの卒業式」。「赤い自転車に乗って」
の著書:山村洋子先生のエッセイです。致知のホームページ【筆
のしずく】で紹介されていたひとりの大学生の感動的なお話です。

少し長文になりますが、お読みください。

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山村先生

きょうは記念すべき日なんですよね。私達大学の卒業式です。

ほんとうなら今頃、卒業式の会場で“仰げば尊し”を歌っている
はずなのですが、私は今ひとり近くの白川公園で“下町の太陽”
を口ずさみながら、昼食におにぎりを食べています。

毎日自分で作って、会社の昼休みにこの公園でひとり食べていま
す。外食はいっさいしたことがありません。

どうしても喉が乾いた時だけは、自販機の缶コーヒーを飲む程度
です。きょうも仕事が5時に終わったら、また6時から12時ま
で別のところでアルバイトです。もうこんな生活が半年位続いて
います。

先生。きょうもいい天気ですよ。3月とは言え、太陽がとても眩
しくて・・・。やっぱりこの歌、歌っています。

そう言えば山村先生は講義が始まる前の“おはよう”の挨拶がわ
りに、そしてまた私達のクラスが何となく元気がない時に、

「みんなどうしたの?こんなに天気がいいというのに・・・」

と言いながら、よくこの歌、歌っていましたよね。

先生が「みんな知っているでしょ。“下町の太陽”」と聞くと
「知らないよ、そんな古い歌」と笑われながらも、先生が何度も
歌うものだから、そのうちみんなも覚えてしまいましたね。

今から約2年前。

山村先生が初めて私達の大学へ着任された日の4月。私もこの大
学の新入生でした。この大学に来て、山村先生にも会えたし、学
校の雰囲気もよく、私はこの大学が気に入り、嬉しくて仕方がな
いと思っていた入学式の1週間後でした。

友達もでき大はしゃぎで家に帰ったその晩、私の父の経営してい
る会社が倒産したことを、父から知らされたのです。

陶器を輸出している小さな会社でした。でも不債額が多かったた
め、家や土地も全部取り上げられることになりました。

毎日家に帰ると、紙が貼られた家具や電化製品がひとつづつなく
なっていくのです。ついに冷蔵庫もテーブルもなにもかもなくな
ってしまいました。

母が勤めはじめました。でも私はそのまま大学に通っていたので
す。弟もいました。高校生です。何としてでも高校だけは出さな
くてはと、私は4時半に授業が終わるとすぐアルバイトに出かけ
ました。

夜中の12時まで働くので、最初は夕食が込になっていたはずな
のに、実際働いてみると夕食が出ないどころか、食べる時間さえ
ないほどの忙しい仕事場でした。

夜中の1時頃帰宅すると、何もなくなってしまった台所の床にサ
ランラップに包んだ小さなおにぎりが2個、いつも置いてありま
した。これが私の夕食です。毎晩、母が作って置いてくれるんで
す。

その後、父は蒸発し、見つかった時自殺未遂をしました。

私達家族は家を追い出され、小さなバラックのようなところに移
り住むことになりました。

この時点で大学をやめることを迫られていました。でも私は絶対
にやめませんでした。

朝、学校に行く前の早朝2時間、学校が終わってからの6時間。
土曜、日曜も返上し、私は夢中で働きながら、こうやって1年半
を過ごしたのです。

でも、とうとう大学をやめなければならない時が来ました。行政
体の手が私のところまで伸びてきたのです。

負債額も多く、また債権者が何人もいる場合は、その債務者の家
族が大学へ行くことは許されないということでした。

あと半年で卒業できたと言うのに・・・。ほんとうに悔しかった
です。

私は今、朝9時から5時まで、夕方6時から12時まで、2ヶ所
で働いています。

昔、先生は、朝9時から5時まで、そして夕方5時半から朝8時
半までの勤務を仮眠時間4時間という中で、2年間続けたことが
あるって話してくれましたよね。

それを思えばまだまだ楽なほうです。それに先生は、妹さんが死
んでしまったそうだけど、私には弟もいるし・・・。

先生、教えてくれましたよね。私達に。

「私は弱い人間です。あなたたちだけではありません。だから一
緒に、こんな弱い自分から今日こそ抜け出しましょう」って。

そして「みんな太陽のようになろうよ」とも言いました。「知ら
ず知らずのうちに相手の心を開かせるような、そんな太陽のよう
な人になろうよね」って。

先生。色んなことを教えてくれて、ありがとう。

私はきょう、白川公園でたったひとりの卒業式をしています。

卒業証書のない卒業式です。そして、私が卒業式に歌う歌は、
“仰げば尊し”ではなく“下町の太陽”です。

不思議なことに、このほうがずっと元気が出るんです。

先生。聞こえますか。私の歌・・・。私の声・・・・。ありがと
う。山村先生。

また明日から新しい気持ちで頑張ります。
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それぞれに感じ取ってもらえたらと思います。春は出会いと別れ
の季節ともいいます。自分自身の立ち位置をしっかり確認してお
きたいと思います。

 

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