職業というのは我慢とか忍耐とか苦労とかを乗り越えないといけない(140509)

親愛なるみなさん、おはようございます。今日もツイてます。

「学びこそ、我が俳優業の原点」津川雅彦(俳優・映画監督)
『致知』2014年6月号連載「生命のメッセージ」より

※対談のお相手は、津川氏と親交があり、遺伝子工学の世界的第
一人者の村上和雄氏です。
———————————————————-
村上 今日はせっかく津川さんにお越しいただいたので、長い役
者人生の中で特に印象深い監督さんのお話もぜひ聞かせてくださ
い。

津川 一番苦労した監督は、伊丹十三さんです。あの人は自殺す
るまでに全部で10本映画を撮って、僕は一本を除いたすべての
作品に出ています。気に入ってくれたのは、たぶん僕が非常に素
直に彼の言うことを聞いて努力したからでしょう。僕も監督をや
ったから分かりますが、監督からみれば「うい」役者だったんだ
と思いますね。

何が勉強になったかというと、めちゃ注文が細かくて多かったこ
とです。台詞を言う時に息継ぎをするんですが、「そこでブレス
しないでください」と、注文をつけてくる。元役者だったから攻
め方をよく知ってるんですね。

村上 息継ぎをするなと。

津川 台詞を覚える時には、息を継ぐ場所も含めて覚えます。突
然息継ぎの場所を変えると、次の台詞が出てこない副作用が起こ
るんです。彼は役者に息継ぎをさせないで、一気に台詞を言わせ
てテンポアップしたかったんでしょう。

『スーパーの女』という作品で、主役の宮本信子と僕がしゃべり
ながら歩く長いシーンなんですが、「そこにある空き缶を歩きな
がら蹴ってください」と言うので蹴ると、「右足でなく左足で蹴
ってください」と言う。

必ず左足で缶を蹴るためには、歩く歩数にまで神経を使わざるを
得ないから、台詞への神経がどうしても疎かになる。するとすか
さず、「台詞が、微妙に淀みました」とか「ちょっと歩き方が不
自然でしたね」と。

村上 それは大変だ。

津川 それだけではない。「この空き缶をここへ蹴ってください」
と場所まで指定するんです。

僕も切れちゃって「サッカーの選手じゃあるまいし、空き缶を決
められた方向に蹴るなんてことはできません」と文句を言ったら、

「でもその空き缶を左手で拾い上げて、机の上のこのキャメラの
左手前に置いてもらわないと画面がしまらないんですよね」と
(笑)。

空き缶が思いどおりの方向に飛ばなければNG。いいところに飛
んだと喜んだ途端、今度は僕が台詞を詰まらせてしまう。

村上 よく我慢されましたね。

津川 これはもう、どんな注文にもめげず台詞を滑らかに言える
ように完璧に覚え込むしかありません。というより、もう臓腑に
叩き込むという感覚ですね。

村上 どんな訓練をしましたか。

津川 台詞を繰り返し何百回も言って覚えるには違いないんです
が、回数をやればいいというものではなくて、日数をかけなきゃ
ダメなんです。寝ては忘れ、起きてはまた覚えなおす。

徐々に忘れる量が少なくなり、一晩や二晩寝てもワンフレーズも
忘れなくなったら、今度は早口言葉で一気にロレらずしゃべれる
ようにする。

次に車を運転しながらしゃべってみる。気は運転のほうに集中し
ないと危ないですから、そんな状態でも台詞がちゃんと出てくる
かを確かめました。どんな障害にも気を散らすことなく言えるよ
うになるまでに14日間かかりましたね。

いまだに2週間前というのが自分の中で定着していて、そこから
始めれば台詞を忘れるという心配は一切なしに、現場では相手役
のセリフのニュアンス、間合い、テンポ、語気といったことにも
神経を集中でき、それに自由に合わせられるようになった。これ、
伊丹さんのおかげです。

村上 津川さんの演技力の原点はそこにあったのですね。

津川 台詞は芝居の基本ですし、覚える作業が一番の苦行です。
やっぱり職業というのは我慢とか忍耐とか苦労とか、そういうも
のを乗り越えない限り、プロの業とはいえないというのは、本当
だなと思います。これからの課題は、いかに芝居をしないですむ
か。

存在感だけで勝負できるようになれるかなんですが、まだまだで
すね。
———————————————————-
津川雅彦氏74歳、まだまだ衰えることを知らない。エネルギー
の源泉は、役者として長年貫いてきた信条なのでしょう。その信
条は紙面で確認してください。

何事も乗り越えないと本物になれませんね。逃げてばかりいると
小手先は上手になりますが、本物にはなれません。本物目指して
いきましょう。


 

ページの先頭へページの先頭へ
株式会社ドゥアイネット
は、iOS/AndroidのARアプリ開発とWebシステム開発を中心としたIT関連サービスを提供しているシステム開発会社です。