本を忘れず末を乱さず (150221)

親愛なるみなさん、おはようございます。今日もツイてます。

今週の倫理です。
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今週は、本紙の発行元である倫理研究所の、ある研究員のエピソ
ードを紹介します。

九州に住むA君は、当時高校三年生でした。実家は自営業でした。
十月のある日曜日、店の準備をする父親の様子がおかしいのです。
すぐに病院へ搬送され、検査の結果、脳内出血と診断されました。

手術は成功したものの、術後の父はもうろうとして、別人のよう
です。会話もできない状態でした。

父の入院から一週間後、A君のもとに一本の電話がありました。
電話の主から「倫理研究所に入ることを決めましたか」と尋ねら
れましたが、意味がわかりません。実は、倫理を学んでいる母が、
進路を決めかねているA君のことをB研究員に相談していたので
す。

寝耳に水の話でしたが、両親が長年、倫理を勉強する姿は見てい
ます。〈これも親孝行だ〉と、A君は面接を受けることにしまし
た。一月十四日、九州に出張中だったB研究員が、A君の家を訪
れ、面談が行なわれました。

翌十五日、父が入院以来、久しぶりに一時帰宅をしました。とい
うのも、父の病院を見舞ったB研究員から、「一度自宅に連れて
帰っては」と提案があったからでした。入院中の、父の精神的な
落ち込みは相当なものだったのです。 

家には帰ったものの、父親は鬱のような状態です。話しかけても
反応がありません。一時間ほど経過し、B研究員がこう話しかけ
た時のことです。

「病気になって大変でしたね。幼少の頃から、きっとご苦労が絶
えなかったのでしょうね」次の瞬間、うつむいていた父が顔を上
げ、何か言おうとしました。ろれつがまわらない口元に耳を近づ
けると、父は「そんなことはない」と言っていたのです。

それから父は、徐々に幼い頃のことを話し出しました。兄弟が多
く貧乏だったけれど、両親が可愛がってくれたことなどを話すう
ちに、父の顔色は良くなり、生気が戻ってきたようでした。そし
て、「このままではいけない。子供たちのためにも元気になりた
い」と涙ながらに話すのです。

父はその日のうちに病院へ戻りました。あれほど弱々しく見えた
父が、帰りには、歩いて階段を下りる様子を夢のような思いでA
君は眺めました。そして、B研究員に「倫理研究所にお世話にな
りたいです。よろしくお願いします」と、決意を告げたのです。

その後A君は、倫理研究所の研究員となりました。業務に追われ、
瞬くように歳月が過ぎた一昨年、父が七十六歳で亡くなりました。

訃報を聞き、実家に戻ったA君ことA研究員。亡き父の枕元で
〈おつかれさまでした〉と声をかけながら、ひと晩を同じ部屋で
過ごしました。

その日は奇しくも一月十五日でした。二十四年前、「誰かを力づ
けられる人になりたい」という決意を胸に、自ら入所を決断した
日です。父の安らかな表情に、まるで「自分で決めた道を貫きな
さい」と言われているようにも感じたのでした。
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なぜこの仕事を選んだのだろう?この仕事は向いているのだろう
か?何かと悩む時期は誰でもあります。しかし決意した瞬間を鮮
明に覚えている人は、多少の揺らぎはあっても元にもどります。
本を忘れず末を乱さずです。よい休日を過ごしましょう。


 

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