大輔が遺したメッセージ (160523)

親愛なるみなさん、おはようございます。今日もツイてます。

月刊『致知』2016年4月号より
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「大輔が遺したメッセージ」福嶋正信(東京都立小山台高校野球
部監督)

忘れもしない、あの事故が起こったのは、私が野球班(部)監督
として東京都立小山台高校に赴任し、2年ほど経った2006年
6月3日のことでした。

「福嶋先生、夏の大会も一か月に迫ったので新しいバットを買い
に行きたいのですが、大輔も連れていっていいですか?」

市川大輔は、当時2年生唯一のレギュラー。派手さはないけれど、
何事にもコツコツと一所懸命に取り組む、誰からも信頼される選
手でした。私は、「いいぞ、大輔も先輩といっしょに行ってこい
よ」と、練習が終わった後に、子供たちを近くのスポーツ店に送
り出したのです。

しかし、それが大輔との今生の別れになるとは、夢にも思いませ
んでした。皆で購入したバットを手に帰宅の途に就いた大輔は、
自宅マンションに設置されていたシンドラー社製のエレベーター
に挟まれる事故に遭い、帰らぬ人となったのです。大輔は手にバ
ットを握り締めたまま亡くなっていたといいます。

あの時、大輔を買いに行かせなかったなら……。事故後、私も生
徒たちも、大輔のことが悔しくて、悲しくて、大粒の涙が止めど
なく溢れ、練習することさえままなりませんでした。

そんな私たちに、再び前を向いて一歩を踏み出す力を与えてくれ
たのが、大輔のお母さんから届いた、「皆さん、悲しい顔で練習
をしていたら大輔が泣きます。だから笑顔で練習してくださいね」
というお手紙。そして大輔が野球日誌に書き残した次のような言
葉の数々でした。

「当たり前のことを当たり前にやる。でもそれが難しい」

「一分一秒を悔いのないように生きる。精いっぱい生きる」

「エブリ デイ マイ ラスト」

泣いていてはいけない、大輔のためにも笑顔でプレーしよう、毎
日を精いっぱい生き、絶対に甲子園にいこう。小山台は都内有数
の進学校で、練習スペースも時間も限られており、甲子園はおろ
か上位進出さえ難しいのが現実でしたが、大輔の事故をきっかけ
にして、チームとしての絆が深まり、必死に練習に励むようにな
ったのです。

そのような「大輔のために」という私たちの思いが、天国の大輔
に届いたのでしょうか。

事故から4か月後に行われた千葉経大附高との試合中、ベンチに
座っていると一匹の赤トンボが私の膝に止まり、じっと動こうと
しません。私はハッとして、思わず「大輔か?」と手を伸ばすと、
赤トンボは私の指にしっかり止まったのでした。

さらに指から離れていった赤トンボに「おい、大輔!」と呼び掛
けると、またぴゅーっとベンチに舞い戻ってくる。その瞬間、私
も選手たちも涙が溢れて止まらなくなりました。奇しくも大輔が
最初に活躍してレギュラーを勝ち取ったのがこの千葉経大附高の
グラウンド。大輔は赤トンボに姿を変え、私たちのもとに戻って
きたのです。

「大輔は生きている。私たちと一緒に戦ってくれている」

やがて、何事にも一所懸命取り組み決して手を抜かない、大輔が
教えてくれた生き方は、小山台野球班の伝統精神として根づき、
目に見える結果として表れるようになっていきました。

・  ・  ・  ・  ・

そんな最中の2014年1月に、嬉しい知らせが私たちのもとに
飛び込んできます。これまでの実績、他校や地域によい影響を与
えてきたことなどを考慮して選ばれる春の選抜高等学校野球大会
(甲子園)の出場枠「二十一世紀枠」に、小山台が都立として初
選出されたのです。

万全の準備をして迎えた甲子園の初舞台でしたが、結果は初戦敗
退という厳しいものでした。しかし、その悔しさを胸に、二十一
世紀枠出場校に相応しい実力、品格を備えたチームになろうと改
めて皆で誓い合うことができました。

そして、そんな私たちを大輔は身近で見守ってくれていたようで
す。ある選手のお母さんが甲子園で着用したユニフォームを洗濯
しようとポケットに手を入れてみると、赤トンボの絵がびっしり
と刺しゅうされたえんじ色の布切れが出てきたのです。

しかも、関係者の誰一人として、その布切れのことを知らないと
言います。いまも真相は分かりませんが、おそらく大輔はいても
たってもいられず、空から舞い降りてきて私たちを応援してくれ
ていたのでしょう。

大輔が亡くなってから早九年が経ちました。しかし、小山台野球
班の一人ひとりが一日一日を精いっぱい生き、全力でプレーする
姿を見せ続けていく限り、大輔が遺した思い、メッセージは、永
遠に人々の心の中に生き続けていくはずです。そのためにも、私
はこれからも力の限りグラウンドに立ち続けます。
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一所懸命に生きる。悔いのない人生を送る。晩年悔いることは、
やって失敗した悔いより、やらなかった悔いが一番残るそうです。

今日も、悔いのない一日を生きていきましょう。


 

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