下請けからの脱却

システム開発は、発注者側と受注者側共に苦労しながら意見を出し合い、試行錯誤を繰り返しながら進めていくものである。どちらかが手を抜くといいシステムは完成しない。
長崎県庁での事例を、長崎県島村様・森様のインタビューを通じてご紹介します。

 

長崎県:森
長崎県:森
長崎県:島村
長崎県:島村
DIN:前田
ドゥアイネット:前田
DIN:穴井
ドゥアイネット:穴井

01.導入

穴井 「e-Japan戦略って雑誌で特集されてましたけど、うちにも仕事回ってくるんですか?」
井川 「うちは下請けだから、難しいんじゃないかなぁ;今の仕事を地道に頑張ってた方がいいと思うよ;」
穴井 「そんなこと言ってたら、ジリ貧じゃないですかぁ。長崎県庁が小口発注するって書いてますよ。
やってみたいです!挑戦しましょうよ!」
井川 「挑戦かぁ。。。よし、わかった!やってみよう 」

02.経緯

長崎県庁情報政策課 O 「休暇システムの入札結果はどうだった?」
長崎県庁情報政策課 M 「ドゥアイネットという地場のIT企業が落札しました。」
長崎県庁情報政策課 O 「ドゥアイネット? 聞いたことないな。大丈夫なのか?」
長崎県庁情報政策課 M 「従業員数が11名の小さい会社です。大丈夫かどうかはやってみないと
わかりませんが、とにかくやってみます。」
長崎県庁情報政策課 O 「(険しい表情で)実績もない会社だから何があるかわからないぞ。しっかりチェックしていってくれよ」

2003年2月、システム開発の一般競争入札を終えた後の長崎県庁情報政策課内での会話である。
開発担当の森蘭子は煩雑な入札事務が一段落し、ホッとするとともに、今後の開発に不安を抱えながら準備を進めていた。

 

2003年2月6日、1回目の打合せのため、ドゥアイネット(以下、DIN)の井川吉嗣と前田慎治が長崎県庁に出向いた。職員数6000名、井川と前田にとっては巨大な組織であった。

打合せの内容は、以外にあっさりしたものだった。提出が必要な書類は多かったが、役所独特の固いしきたりめいた決まりごとの説明はなく、県の担当者の森はシステム開発にあたってのポイントだけを淡々と説明した。

長崎県:森
長崎県:森
「正直、経験のある企業が落札してくれればと思ってました。全庁的なシステムなので、失敗は許されない。当時は自分もシステムの知識が乏しかったですし、受注者側も行政の事務の流れに詳しくないとなると、システムが完成するのかどうか非常に不安でした。
でも決まったからにはやるしかない。という感じでした。」

03.ながさきITモデル

そもそも、県庁のようなある程度の規模を持つ自治体が、地場のIT企業にシステム開発を発注するわけがないじゃないか。当然の疑問が湧いてくる。

これには事情がある。金子長崎県知事は庁内のシステム開発における地場IT企業の参入の少なさに疑問を抱いており、その現状を打開するために㈱日本総合研究所に依頼し、CIO(総務部参事監)として島村秀世を派遣してもらった。

その島村が発案したビジネスモデルが以下の“ながさきITモデル”であり、長崎県庁のシステム開発の発注方法として採用されていたのである。

 

~ながさきITモデルとは?~
システムの詳しい仕様書を県の担当者が中心となって作成し、さらにその仕様書に基づいて分割して発注するという発注方式のことです。

従来の大規模なシステム開発については、一括発注のため大手IT企業しか受注ができず、県内のIT企業はその下請けとしてしか仕事を受注できない状態であり、地元IT企業がいつまでたっても育たないという大きな問題がありました。

このため、長崎県電子県庁システムの構築にあたっては、

①オープンソースソフトウェア(インターネットで誰でも自由に使えるようにプログラムが公開されているソフトウエア)を積極的に活用する。

②特定のメーカーに依存しない詳細な仕様書を県自身が作成し公開する。

③システムを適正な規模に分割して入札による発注を行う。

という手法を取り入れています。
これにより、技術力があれば地元IT企業でも入札に参加できることとなり、地元企業の振興を図ることができます。
さらに、地元IT企業が直接受注することで、人材の育成を進めることができます。
これを「ながさきITモデル」と呼んでおり、この手法をさらに発展させたものを平成15年1月にビジネスモデルとして
特許出願しています。

04.開発着手

前田は早速、開発にとりかかった。県側から提出された仕様書はとても詳細なものだったが、仕様書を詳しく読み進めていくと、確認しなければならない点が次から次に出てきた。全てメールで森に質問した。
長崎県:森
「カラムの型はこれでいいのか?メール関数は使えるのか?
サーバのIPアドレスは?メールに書いてある質問の意味がわからない。
言葉もわからない…もううんざり。って感じでした。」


発注者である県側は事務の流れは説明できても、システム専門用語を使った技術的な説明はできない。受注者であるDINは技術的な質問はできるが事務の流れを正確には把握していなかった。


森も前田も悶々とした日々が続いたが、このギャップを埋めるために、森はシステムに関する勉強を、前田は県庁の事務の流れに関する勉強を行った。

猛勉強の結果、お互いの言いたいことが初めてわかった。わかった上で改めてシステムの検討を行った。森と前田は、「仕様書を一部変えるしかない」という結論を出した。

しかし今までにそんな前例はない。思い切って、島村に相談した。島村はあっさり答えた。

「最初から完璧な仕様書が書ける人間なんていないよ。堂々となおせばいいじゃない。」

05.1回目の納品

2003年3月25日 1回目の納品。森と前田の間で、詳細に練り上げられた仕様書を基に開発されたシステムが完成した。

 

長崎県:森

「不具合を連絡すると、すぐ対応策を考えてくれて、新しいファイルをアップロードしてくれる。何度も何度もその作業を繰り返して対応してくれる。

そういう前田さんの誠実な対応を見ていると、
仕事を頼むのは企業ではなく、人なんだなあと感じました。

他の企業とも仕事のやり取りをしてますが、その対応が出来る出来ないの議論から始めないといけないことが多いです。前田さんの場合、最初から対応するという前提があって、そのためにはどうすればいいかをすぐ考えてくれるので楽でした。

当然、前田さんでは対応しきれないこともありますが、その場合でも仕様を満たすための新たな提案をしてくれましたので助かりました」

長崎県:島村
電話すればすぐ来てくれる。復旧に時間がかからない。すぐ治る。
という点で、発注者と受注者の間に強い信頼関係が生まれるんですよ。

大手に発注すると誰が作っているのか見えない。改修要望しても時間がかかりすぎたり、営業経由のため、誤解と勘違いの繰り返し。

それに比べ、 地場IT企業は作っている人が見える。発注者と受注者の距離を縮めることが、時間と経費の削減、信頼関係にまでつながっているんです。」

綿密な打合せを繰り返しながら開発したシステムであったが、それでもまだ予期しない障害があった。また、森と前田の度重なるやり取りが始まった。森がバグや不具合を発見する。
前田が対応策を考え、すぐ県庁に出向き改修する。
この繰り返しを重ね、2003年11月末休暇システムが完成した。

06.運用開始

長崎県:森
「1日350件くらいの利用があってます。当然、現在も正常稼動中です。職場からの評判もそこそこ良いです。
この時点で公開したのは「年次休暇システム」だけでしたが、現在はそれ以外の「特別休暇」等を開発中です。
もちろんDINさんに参画してもらってます。」

07.Curlを使ったシステム開発

Q.休暇システムの開発が一段落した後、島村参事監はDINに対し、「Curlをやってみない?」と声をかけられたそうですが、その背景はどんなところにあったのでしょうか?
長崎県:島村

「今後、さらにシステムのWeb化を進めていったら、Webサーバが肥大化する。ネットワークも太くしなければならない。システム化による業務の改善はしなければならないが、コスト増は避けなければならない。そういうことを考えている時にリッチクライアントであるCurlに出会ったんですよ。

ほとんどの処理をクライアント側でやってくれる。
必要なデータのみをサーバに問い合わせる方式のリッチクライアント方式は、先ほどの悩みを全て解決してくれる方式でした。」

 

DINで初めてCurlに取り組んだのは、その当時入社2年目の穴井だった。
初めは戸惑いの連続だったが、今では仕様書が書けるまで成長した。

DIN:穴井
DIN:穴井


Q.穴井さんに対する印象を教えてください。

長崎県:森

「『失礼しまあす』と元気いっぱいで入室してくる明るい女性ですね。
どんなものを作りたいかというこちらの要求をしっかり聞いてくれて、積極的に提案をしてくれるタイプですね。関連のソースを集めたり、仕事がその場しのぎでないところが好感が持てます。」

 

長崎県:島村

「負けず嫌い。相手の仕事を理解してどうシステム化してやるかと考える昔のSE気質をもっている人。自社のパッケージを売ることしか考えない企業のSEとは一線を画したタイプの人ですね。」

 

Q.プロジェクトを進めていく上で難しい点は多々あると思うが、DINと組んだらこういうところがうまくいったという点はどんなところでしたか?

長崎県:森

「いくつかの企業とやりとりしましたが、専門用語を並べて説明するところが多い。 DINは易しい言葉でわかりやすく説明してくれますし、積極的な提案もやってくれるので助かりました。効率的なテーブルの作り方も教えてもらいましたし。」

 

Q.今、DINに新たな仕事を頼みたいか?

長崎県:森

「頼みたいですね。ただ県内でも特定企業に発注が偏ってはいけないので、発注は公平にやってます。」

 

Q.課内の他の職員の評価はどうか?

長崎県:森
「評価は高いです。他の企業に比べて話し易いって言ってますよ。
直接SEとやりとりできるから確実と言ってる人もいます。」

08.ドゥアイネットにこれから期待すること

長崎県:島村
長崎県:島村
「ドゥアイネットは、開発は十分にできるようになった。今後は、設計の技術をさらに高めてほしい。
設計も開発もどちらもできますという企業になってほしい。

得意分野が設計のみ、開発のみと二極化していく傾向のなかで、どちらかに傾斜していくのではなくて、簡単に理解できて、即開発に取り組めますという設計が書けて、なおかつ開発もやりますよという企業になってほしい。我々は地場にそういう企業を求めているんですよ。」

09.参考

システム開発は、発注者側と受注者側共に苦労しながら意見を出し合い、試行錯誤を繰り返しながら進めていくものである。どちらかが手を抜くといいシステムは完成しない。


また、お互いに誠実であることが成功の必要条件である。開発途上においては、トラブルの原因を他者に押し付けがちであるが、まずはお互いに自分側の原因であると考え、解決を図る姿勢が何より大事である。

失敗するプロジェクトは原因の押し付け合いの後始末がうまくいかないで、解決の方策自体が放置されている結果である。
今後も引き続き、DINが誠意ある企業であることを望んでいる。


 

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